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AAPA『Papergate』再演。

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2016年4月。コンテンポラリーダンスプロジェクト「AAPA」が、2008年に初演された「Papergate」を再創作し、北千住の日の出町団地スタジオで上演した。8年の星霜を経て、変わったものとは。そして変わらなかったものとは。

不惑【ふ-わく】
「論語」の「四十にして惑わず」による。人生の方向が定まって迷わなくなる年、の意。

このPAPERGATEという作品は、演出家の上本竜平の原風景として存在する、彼が生まれ育った東京郊外の夜の光景をモティーフとして描かれた作品だ。その意味で、この作品は彼そのものが主人公として描かれている、とわたしは信じている。

2008年の「AAPA新作公演『Papergate』―原風景としての都市郊外を描き出す試み」はこちら

AAPAは2008年ごろ、横浜を中心に活動していたが、その後何度かの変遷を経て、いまは北千住にスタジオを構えている。海のない、山に囲まれた郊外で育った私にとって、横浜はあこがれの存在だった。

私は、横浜で活動しているAAPAが好きだった。港町のモダンな通り。古びたレンガ造りの古い役所の建物。昔ながらの大学の校舎のようでもあった。その一室にAAPAがあった。まるで大学の部室のようだった。

その後、レンガ造りの古い建物は閉鎖された。AAPAは横浜を追われ、首都圏各地に活動拠点を探して点々とすることとなった。その後、震災があり、いろいろな断絶があり、AAPAとも疎遠になった。

日の出町団地スタジオ
日の出町団地スタジオ

そして、時は流れて2016年の春、東京の右半分、北千住。団地の一角のスタジオで、私は床に体育座りをして開演を待っている。

舞台は、上本と見知らぬ女性がひとつ屋根の下で会話をしているシーンから幕を上げる。上本がコーヒーを淹れているところを見ると、どうやら朝を迎えたようだ。実際にコーヒーサーバーから褐色の液体が注がれると、客席にまで香ばしい香りが届いてくる。

男女は、まだお互いのことをあまり知らないようだ。女性が「ねえ、ふだん何をやってるの?」と聞く。
男性が「コンテンポラリーダンスなんだ」と答えて説明する。男性はスマートフォンをいじりながら話している。そういう舞台だ。他愛ないやり取りのあと、ダンス、そして暗転。

今度は夫婦の情景だ。上本の妻が突然登場する。そろそろ子どもがほしい、と妻。上本はどこか迷いがあるのか、あまり踏ん切りがつかないようで生返事だ。微妙な空気感の中、ふたりは外に出る。

まだ桜が咲いている。そして、風がつよい。木々が、新緑が、大きく揺れている。ふたりは北千住の住宅街の狭い路地をずんずん進んでいく。観客たちもその後を追って歩く。

ふたりは、とある古びた一軒家へと入っていく。観客たちもその後を追って一軒家へと入る。

ところが今度は上本が姿を消す。取り残され、所在無げな妻。外を吹く風に揺れる木々の影が部屋の中で激しくうごめいている。

妻の想像のなかのイメージとして新たに現れる女性がダンスを踊り、舞台は幕を閉じる。

どうやら、この一軒家も上本にとって、そして夫婦にとっても、AAPAにとっても安住の地ではないようだ。外をつよい風がふいている。

彼はまだ、迷っている。

(了)

舞台の終盤が演じられた一軒家。
舞台の終盤が演じられた一軒家。
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