マツダの世界戦略コンパクトカー「デミオ」が、2018年8月にマイナーチェンジ。価格はそのままに、エンジンは1.3リットルから1.5リットルへと排気量がアップした。新世代の制御技術「Gベクタリングコントロール(GVC)」と合わせて、いよいよ熟成の度合いを増したデミオ。遅ればせながら試乗の機会に恵まれたが、果たして―。

駐車場を出る瞬間に違いは歴然!

ちなみに、今回試乗したのはTimesカーシェアリングで首都圏某所に配置されている車両。グレードはベースグレードの1つ上の15S。

いままでメインで乗っていたのが、前期型の13S。外見的な違いは、アンテナがシャークフィンアンテナになったのに気づく程度。

ところが、駐車場から出ると、走りの違いは歴然。ステアリングはかなり重く、重厚感が増した印象。わかりやすくいえば欧州的。トヨタのフニャフニャハンドリングや、ノートの安っぽいドンガラ感とは別次元。この志向は前期型13Sでも同様だったが、さらに重厚感は増している。おそらく日本のコンパクトカーの中ではいちばんステアリングが重いんじゃないか・・・?(笑)

エンジンの排気量アップの恩恵は、余裕あるトルクとなってすぐに実感することができる。市街地では別にブン回す必要もないのだが、引っ張って4,000回転くらいまで回せばそうとう速い。

Gベクタリングの快感コーナリング

市街地を外れ、ワインディングでいよいよ「Gベクタリング」を体感する機会が訪れる。

今回は千葉県の郊外だが、初めて走る道の初めてのコーナー。目測を見誤って、多少のオーバースピードでコーナーに入ってしまう。

そんな場面でも、コーナーを曲がりながらステアリングを細かく修正する必要がない。アクセルを戻してブレーキングする必要もない。「あれっ」という間にコーナーを駆け抜けられてしまう、そんな印象だ。もちろんワインディングでなくても、交差点を曲がるだけでも、この「あれ、曲がれちゃう」感は体感できる。

ベンツに「マジックカーペット」なるテクノロジーが存在する。あちらはサスペンションの技術だが、それならこのGVCだって「マジックカーペット」だ!

挙動がギクシャクすることがないから、同乗者のストレスも軽減されるというベネフィットだ。GVCはもしかしたらステアリングを握らないで助手席やリアシートに座ったときこそ体感できる技術かもしれない。

今回試乗したデミオ15S

・・・とはいうものの、GVC非搭載モデルと乗り比べているからこその驚きであって、いきなりGVC搭載モデルのハンドルを握って「あっ、これは素晴らしいですね!」と感嘆するようなこれ見よがしのテクノロジーではないという印象ではある。

とはいえ、1.5Lの余裕の排気量となったことで、車内で感じるエンジンノイズも小さくなり、GVCの制御と相まってワンクラス、いや2つほど上のクラスといっても過言ではないドライブフィールの高級感を感じた。

今回は1時間ほどのドライブだったが、長距離ドライブになればなるほど、GVCの効果は疲労感の減少という形で顕著になったはずだ。

ちなみに、ドライブの平均燃費は17km。1.3Lモデルとほぼ変わらない高燃費だった。

褒めてばかりではアレなので、気になった点を挙げると、アクセルを強めに踏み込んだときの加速が乱暴で、若干違和感を感じた。走行わずか2000kmのタマだったので、まだあまり電子制御が学習されていない挙動だと信じたいが。

マイナーチェンジでインパネの質感も向上

さて、今回のデミオだが、前期型と比べて、インパネまわりの素材やデザインがかなり変わり、質感も向上していることに驚いた(2016年11月のGVC搭載時からインパネデザイン変更とのことで、3年前から変わってたんですね…)。

こちらが前期型(2014年〜)のインパネ。ステアリングスイッチのデザインに注目。
2018年モデル。ステアリングスイッチのデザインはCX-8等に通じる最新のデザインに。

ドライバー目線でいちばん気づくのが、ステアリングまわりのデザイン。前期型では「おおー、最近はコンパクトカーでもこれだけステアリングスイッチが付く時代になったのか」とそれだけでもびっくりだった。

後で知ったところによれば、2016年11月からこのデザインとのこと。

後期型では、「ステアリングだけ見たらCX-8って言われてもわからないんじゃないか?!」というほどにデザイン、質感ともに向上している。

また、ウィンカーやワイパーのスイッチもつや消しの高級感ある質感となり、操作感も向上している。

クラスタースイッチには安全装備がモリモリ

スイッチにメクラがひとつもないなんて!

また、インパネ右側のクラスタースイッチには、安全装備のスイッチがモリモリ。プレートがすべてスイッチで埋まっているのにビックリ。

左上から、
・アイドリングストップ
・車線逸脱警報
・DSC (ダイナミック·スタビリティ·コントロール)
・アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート (衝突防止装置)
・パーキングセンサー
・ブラインド・スポット・モニタリング (BSM)

とくにすごいのがブラインド・スポット・モニタリングで、走行中に左右の死角に他のクルマが入るとサイドミラーにインジケータを表示し、注意を喚起するのには驚いた。

熟成を重ねたデミオの買い時は「いま」

2014年のデビュー以来、2016年にGVC搭載、2018年に排気量アップと着実に「弱点」をつぶし、正常進化を続けてきたDJ系デミオ。

他のマツダの車種が6年でフルモデルチェンジされることを考えると、2020年にデミオも刷新される可能性が濃厚だ。まだデザインスタディは発表されていないが、マツダ3に代表される新しいデザインコンセプトが導入されることは間違いない。

現行のデザインが好きなら、熟成を重ねた今こそが買い時だと断言できるだろう。もし中古で買うにも、後期型の値こなれを狙って買いたいなあ。