2019年4月20日に、神奈川県横浜市のマツダR&Dセンターで実施された「ALL-NEW MAZDA3 北米仕様車特別先行内見会」。5月に日本での発売が予定されているアクセラ改め「マツダ3」のセダン/ハッチバックが展示され、いち早く新世代の「魂動デザイン」に触れることができた。
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ふだん新車の内見会など行かない私が、思わずニュースレターと内見会に申し込んでしまう。それほどマツダ3のデザインは魅力的だった。
コンセプトモデルからデチューンされることなく量産車に生かされた「魂動」デザイン。とくにハッチバックモデルのCピラーのセクシーな造形。各所で語り尽くされたことなので今さら私が付け加えることはないが、一日でも早く自分の目で確かめてみたい、と思わせるだけの魅力がマツダ3にはある。
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チーフデザイナーの土田康剛氏のプレゼンも
内見会では、チーフデザイナーの土田康剛氏がわざわざ駆けつけ、プレゼンテーションを行なうという力の入れよう。さらに進化した「魂動」デザインは、これ見よがしのキャラクターラインではなく、光の当たり方によって美しく表情を変えることを映像とともにプレゼンテーションした。
つまりは「引き算の美学」。アップルをはじめ、世界的にはデザインの潮流になっているはずなのだが、なぜかカーデザインの分野では「足し算」や「ドヤ顔」が流行っているのはどうしてだろう。
また、こだわりのポイントとしては、スイッチ類の操作フィーリングにも「マツダらしさ」の世界観を反映したという。確かに、インストルメントパネルのエアコンやオーディオスイッチを操作すると、高級万年筆のキャップを開け閉めしたときのようなカチッという小気味よい操作感が得られる。
あるいは今はコストダウンでなかなか体験することができなくなってしまったが、高級オーディオのスイッチを操作しているような「よいものに触れている」という満足感が得られる。
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たしかに他のメーカーのクルマでは、いくらインテリアをメッキパーツや木目調で飾り立てていても、スイッチ類はグニャー、フニャッというだらしない操作感であることが多く、なにかだらしない生活感を垣間見て萎えることが多かった。今まで私がクルマのスイッチ類に抱いていた不満を見事にブラッシュアップしている。
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もちろん、マツダがめざす人馬一体のドライブフィールもさらに熟成されたことがプレゼンテーションされたが、試乗はできなかったのでこの体験は実車のステアリングを握ったときまでお預けということになる。
ただし、シートは現行モデルと比べてもかなり肉厚で、ホールド感は抜群。マツダのシートは人間工学に基づき、乗る人の頭の動きを最小限に留めることで人馬一体のライドフィーリングを実現していることがプレゼンテーションされた。後で社員の方に聞いたところでは、フロントだけではなく、リアシートも同じようにデザインされているとのことだ。つまり、ポルシェのパナメーラのような、大人4人が座ってもワインディングを快適に駆け抜けることができるように考えられているということだ。
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とはいえ、シートの厚みのためにもともと広めではないリアシートのニースペースはかなり窮屈になってしまっているが・・・。最近は、航空機のシートでもより薄く、さらには後席の膝スペースをくり抜くような形で居住性に配慮するようなトレンドが見受けられるが、さすがにその方向性を求めるのは酷か。
プレゼンテーション後は、1時間近く、自由に乗ったり、触ったり、社員の方の話を聞いたりする時間が設けられた。
それでは、展示された3台のモデル(ハッチバック2台、セダン1台)を順番に見ていきたい。
ポリメタルグレーのエアロパーツ装着車
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ハッチバックの1台は新色ポリメタルグレーのエアロパーツ装着車。ポリメタルグレーは、屋内では樹脂を思わせるマットな質感だが、屋外では光を受けてメタリックに輝く。デザイナーの土田氏いわく「一粒で2度おいしい」オススメカラー。
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先代のプリウスでも陶器を思わせるグリーンや、日産デュアリスでもセメントブルーという外装色があったが、こういう異素材を思わせるカラーは楽しい。ただ、所有したことはないので飽きがこないかどうかは分からないが・・・。
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215/45R18のホイールは鍛造でなんとBBS製。小さくBBSのロゴが刻印されている。スポークがリムまでせり出すことで、ワンサイズ大きく見せる工夫がこらされている。ホイールデザインのモチーフはVISION COUPE(ビジョンクーペ)だそうで、たしかに同じデザインだ。
社員の方によれば、通常の鋳造ホイールより2−3kg軽い10kgの重量とのお話だった。
また、ホイールハウスの内側を削ることで、よりクリアランスを小さくする工夫が凝らされており、土田氏も「ぜひ触ってみてください」。ホイールハウスに手を突っ込んでみると、確かに内側が鋭くえぐられている。
このマツダ3で、個人的にいちばん気に入ったのが、フロントバンパー下部の控えめなライン。「キャラクターライン」は排しているのでそう呼ぶと怒られてしまうが、下品な開口部やフィンのデザインが氾濫する中で、面にサッと筆で描いたようなラインを描くことで単調にならない工夫が凝らされている。
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逆にデザイナーの立場で言えば、よくこれを許してくれたな、マツダっていい会社だな、ということになる。
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リアも、あえてショルダーラインを設けずになめらかな造形とすることで凝縮された印象を与えている。
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ドアミラーも、ステーの上にオブジェを載せたような美しいデザインだ。
なお、エアロパーツはメーカーではなくディーラーオプションとのことだった。
やはりマツダ車はソウルレッド
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こちらが、マツダ3、いやマツダそのもののイメージカラーである「ソウルレッド」をまとったハッチバック。
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やはりCピラーまわりのグラマラスな造形がセクシーポイントだ。
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セダンも美しい
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そして、最後がセダン。
土田氏によれば、今回のセダンは先代のウェッジシェイプを際立たせたクーペライクなデザインから一変し、3ボックス感を強調した大人が乗れるセダンらしいセダンを目指したとのことだが、個人的にはうーんそこまで先代と明確なキャラクターの違いがあるかな・・・という印象でありました。やはり世界戦略車のデザインともなると、いろいろあるのでしょうね。
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とはいうものの、やはりサイドのラインが美しいことは論を俟たない。
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こちらは通常のアルミホイールだが、215/45R18でサイズは前出の鍛造ホイールと変わらない。
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正直、ここまでやってしまったかマツダ、自らハードルを上げてしまったが、次の一手はどうする、と心配になってしまうほどの完成度の高さ。
社員の方に、「80点に仕上げて次回に持ち越すっていう選択はなかったんですか」と聞きそうになったが、聞いたら殴られるだろうなと思って聞けずに帰途についたのでした。