2023年の酷暑で、エアコンは7〜9月の間ほぼ24時間つけっぱなしに。ある日エアコンの中をのぞき込むとファンが真っ白に雪化粧を…。エアコンの清掃には、洗浄スプレーを使う、専門業者に頼むなどいろいろな方法があるが、DIYで可能な限り分解して清掃してみることに。シロッコファンを取り外し、熱交換器(アルミフィン)を清掃する方法について紹介したい。
機種は ダイキン S25KTNS-W (2009年製)
ちなみに、エアコンの機種は2009年製 S25KTNS-W(室内機の機種名はF25KTNS-W)。8畳用のベーシックモデルだ。すでに製造から14年が経過している。室内機にも「10年を超えて使用して、経年劣化で発火・けが等しても知らんぞ」と警告が。しかし、賃貸住宅をはじめとして、日本中でこれより古いエアコンはいくらでも稼働しているはずだ。
ちなみに、古いエアコンで気になるのは電気代。S25KTNS-Wのエネルギー消費効率は冷房:4.81、暖房:5.75、冷暖房平均:5.28、通年エネルギー消費効率(APF):5.0 となっている。
最新の2023年モデルではどうか。スタンダードモデルのEシリーズで、同じ2.5kW用のS253ATES-W の通年エネルギー消費効率(APF)は5.7。約14%の改善で、思ったほど差はない。年間の電気代で約3,000円の差しかないので、買い替えてもコストを回収できない。今使っているモデルをそのまま使い続けたほうが経済的だ。廉価モデルでは10年間の技術革新はほぼ横ばいとなってしまっているようだ。
(S253ATES-Wの期間消費電力量 830kWh(JIS C 9612:2013)をもとに年間電気代 22,410 円と仮定)
清掃前の状況
こちらが清掃前の状況。シロッコファン(ダイキンではクロスフローファンと呼んでいる)がカビで白く雪化粧しているおぞましい光景。カビが生えるということは、シロッコファンにホコリや油汚れなどの温床が発生している証拠。表面を軽く拭くだけでは対症療法にしかならない。
エアコン清掃には、
- 見えるところだけ拭く(見えないところは”臭い物に蓋”)
- ホームセンターなどで売っているエアコン洗浄スプレーを使う
- 専門業者に頼む
などのさまざまな選択肢があるが、DIYで分解清掃にチャレンジしてみることにする。
というのも、 YouTube などで「ダイキンエアコンのシロッコファンはネジではなく、マグネットで固定されているだけなので、取り外しが比較的容易」という情報を得たから。
「DIYをめぐる冒険」さんの動画を見て、私は今回の作業を決意しました。ほんとうに助かりました。ありがとうございます。
シロッコファンを拭いてみる
とりあえず、手慣らしにシロッコファンを拭いてみることにする。
作業の邪魔になるので、上下風向ルーバー・左右風向ルーバーも外しておく。これも最初はコツがいるが、慣れればすぐに外すことができる。
上下風向ルーバー:まず中央の軸を外す。あとはルーバーを少し曲げれば外すことができる
左右風向ルーバー:左右2箇所のツメで固定されているので、手前にこじると外れる。
よほどのことがない限り割れない素材でできているので、安心して取り外してほしい。
もちろん、垂れた排水が部屋の壁紙を濡らさないように、ビニールで養生しておく。
ファンの羽根はカビで真っ白。これを拭いていく。吸い込みたくない人はマスクしたほうがいいかも。
クイックルワイパーなどで使われている不織布のクロスをハサミで手頃なサイズに切り、割り箸で巻いたものをファンの間に差し込んでカビを拭き取っていく。
世の中便利なもので、近年はファンの隙間に入るエアコン掃除専用ブラシも発明されたそうなので、これを使ってみてもいいかもしれない。
見たところ、すこし状況はよくなったようだが、まず天井に近いところにあるエアコンの隙間に手を伸ばして作業するのは非常に腰に良くない。
ファンの表と裏、どちらもきれいに拭くのは非常に難しい。また、シロッコファンの羽根は約30枚の羽根が8つ横につながった形状をしているため、合計240枚の裏表を全てカンペキに拭き上げるのはほぼ無理ゲー。この作業を繰り返すのは非効率的なので、取り外してイッキに丸洗いすることとする。
エアコンを分解する前に
まず、エアコンを自分で分解して清掃するのは、完全に自己責任となることに留意してほしい。もし壊れて動かなくなっても、私に文句を言うのはノー・グッドだ。そして、分解清掃時は主電源を切り、電源コードを抜いたうえで作業すること。
メーカーが公開している図面・サービス資料を活用する
エアコンの部品構成等については、メーカーのサポートサイトでさまざまな図面が公開してあるので、規約に同意した上で利用すると便利である。
分解に際していちばん重宝するのは、「パーツリスト」だろう。全構成部品と名称、位置関係が一目瞭然だ。どこが何本のネジで止まっているのか、ただはめ込んであるだけなのか、どの順番にパーツが組まれているのかがわかる。
カバーを外す
まず、エアコンカバー(前面グリル)を取り外していく。取り外しは、脚立などでエアコンの上部に手が届けば非常にカンタン。前面パネルを上に開けたところにある2箇所のネジを外す。
なお、この写真では運転中となっているが、分解前にはかならず主電源を切り、電源コードを抜いておくこと。
前面グリル上部にツメが3箇所あるので、マイナスドライバーなどで外してあげる。ツメを下に押し下げるだけなので、手でも外せる。
灰色のツメを押し下げてあげると土台(底フレーム)から外すことができる。
エアコンカバーを外したところ。前面はたまに拭いているので見た目はキレイだ。
カバーの洗浄
が、やはり手の届かない天面は汚い。
内側もカビが目立つ。取り外したときでないと掃除できない箇所なので、必ずクリーニングしよう。
こうした部品は、風呂場で丸洗いするのがベスト。前面カバーはおふろ洗剤とスポンジで問題なく汚れが落ちた。
こちらがビフォアアフター。お手軽清掃は、マイペットなどの洗剤を使ってカバーを拭くだけでもだいぶ気分が違うと思う。
シロッコファン(クロスフローファン)を外す
それでは、いよいよ肝心のシロッコファンを取り外していく。そのためには、アルミフィン(正式名称:クロスフィン熱交換器)を外す必要がある。
左側側板を外す
アルミフィンは、左右に白い樹脂製の側板にはめられた状態でフレーム(灰色の土台)に固定されている。この側板もカビまみれでとても汚いが、後で洗っていく予定。
- 左側の側板のネジを外す・・・こちらは問題ない
- フレームにはめ込まれている大きなツメを下に押し下げて外す。こちらは少しコツがいるため難しい。
右側側板を外す
右側は、まず電装品箱を外してから側板(白いプラスチックのパーツ)を外す。
- 温度センサー(中央のコード。中央の銅の筒に先端が差し込んである)を引き抜いておく。コードを引っ張らずに、先端のセンサー部をつまんで抜く。
- 電装品箱の黒いカバーが干渉して邪魔になるのでカバーも外しておく
- 電装品箱の固定ネジを外し、電装品箱を取り外す。
- 側板のネジをゆるめて取り外す。
モーターを外す
電装品箱を外すと、丸いモーターが見える。正式名称は「ファン電動機」。
3箇所のツメで固定されているので順番に外していく。
手前:側板にツメで固定されている。
下:フレームにツメで固定されている。
奥:難易度が高い。次の写真を参照
上の写真はモーターを取り外したところだが、ご覧のように奥のツメは左右両方からはさむ形になっているので外すときに注意。
また、モーターとシロッコファンはマグネットでくっついているため、布などを巻いたマイナスドライバーを差し込んでテコの原理で外す。経年によって樹脂が固着しておりなかなか外れないときもある。
電装品箱とモーターを外したところ。下にぶら下がっている白い部品がファンを動かすモーター。
さすがにぶら下げておくのは断線の可能性があるため、外しておく。電装品箱とモーターはコネクタで接続されているため、容易に外せる。
取り外したエアコン室内機のモーター。カバーを開けてホコリを取り除いておいてもよいだろう。周囲に3つ配置されているのは防振ゴム。
シロッコファンの外し方
いよいよシロッコファンを外していく。左側から外す。
- 側板を持ち上げる
- 軸受がフレームにハマっているので、上に持ち上げて外す。
- シロッコファンを引き抜く
右側も、モーターを外したので、シロッコファンが見えるようになった。
- アルミフィンの右側側板(白いパーツ)を持ち上げる
- シロッコファンは溝にはまっているので、浮かせながら引き抜く。
ようやくシロッコファンを単体で取り外すことができた。
ちなみに、本来モーターとシロッコファンはマグネットでこのような形でくっついている。
シロッコファンは遠目にはそこまで汚れていないように見えるが・・・鼻を近づけるとカビの臭いが強い。
よく見るとやはり汚れている。特に裏側。拭いても落ちない固着したホコリや油汚れがカビの温床となるため、徹底的に汚れを落としていきたい。
シロッコファンを洗う
シロッコファンの洗浄には、100均(セリア)で売られているアルカリ電解水クリーナーと重曹を使っていく。
浴槽にお湯を張り、シロッコファンを沈めたところに重曹をふりかけて放置。汚れを浮かせてから、ファンにアルカリ電解水を吹きかけ、歯ブラシなどでこすって汚れを落とした。また、シャワーの水圧を強にして汚れを飛ばしていく。
シロッコファンの洗浄風景。お湯に黒い汚れが沈んでいる。
洗浄後、お湯を抜くとこれだけの汚れが…。
乾燥させて翌日、まだファンの裏側に汚れが残っていたので、定規やヘラなどの平べったい板にゾウキンを巻き付けてこすり、なんとか汚れを落とした。さすが14年分の汚れだけあってガンコだ。
洗浄後のシロッコファン。新品と見違えるほどに美しく…(少なくとも外側は)
カビの臭いもほぼしなくなった。
アルミフィン(熱交換器)の清掃
洗浄の終わったシロッコファンをもとに戻す。が、上のアルミフィンを見てほしい。下のほうは、おそらくドレン(排水)に浸かったためか、水垢がこびりついておりこれまたおぞましい光景だ。
アルミフィンは、エアコン洗浄スプレーで掃除しても良いが、丁度アルカリ電解水スプレーがあるので、どれくらい効果があるか試してみることにする。
アルカリ電解水スプレーを吹きかけ、歯ブラシでこすったところ、汚れが明らかに落ちている。
なお、アルミフィンの清掃にプロは銅ブラシも使用したりするそうだが、いずれにしてもブラシはフィンの方向に沿ってこすり、フィンを曲げないように気をつける。
なんとか見られるほどの美しさに。
また、アルミフィンの一部はサビが発生し黒くなっており、これはさすがに経年劣化のため修復不可能かと思われたが、アルカリ電解水スプレー+歯ブラシで清掃したところ、落とすことができた。
もしかすると、サビでなく黒カビだったのかもしれない。
いずれにしても、少しは冷暖房効率もアップしそう?!
ちなみに、今回はただのアルカリ電解水スプレーで清掃したが、効果を長持ちさせたいのであれば、防カビ成分が配合されているスプレーを使用するのも非常に有効だと思う。
ちなみに、こちらがアルミフィンを磨いた後の歯ブラシ。おぞましい汚れが溜まっている。
ちなみに、熱交換器フィンの裏側がこちら。目視レベルではきれいだったため、今回はこのままにする。
その他の箇所の清掃
熱交換器(アルミフィン)の側板を取り外すと、やはり内側はカビが繁殖しているため、中性洗剤で洗浄する。
こちらがビフォアアフター。
シロッコファンを取り外した後のフレーム内部も汚れていたので、清掃しておく。
電源部は静電気でホコリを寄せ付けてしまうため、汚い。ホコリを落とし、拭いておく。
熱交換器の上部も長年のホコリが蓄積していたので歯ブラシで汚れを取っておく。
組み立て
部品を組み立て直したところ。
カバーを取り付け、再びネジ止め。
こちらで復元完了。
14年目のエアコンとは思えない美しい姿になった。
室内機を分解してわかったこと
室内機を分解してわかったことは、カバー(前面グリル)はカンタンに外れるようになっているということ。カバーを外してアルミフィン(熱交換器)を露出させるだけで、清掃のしやすさは格段に上がる。
また、これまで私はエアコン洗浄スプレーの使用を躊躇していたのだが、その理由は「エアコンの内部構造がわからないのに液体を吹きかけるのが怖すぎる」から。
エアコン本体にも「故障・水漏れの恐れあり お客様自身でエアコン内部の洗浄をしないこと」と大きく警告が書かれている。
額面通りに読めば、エアコン洗浄スプレーの使用もNGだ。
だが、エアコンを分解してみると、濡らしてはいけない電装品の部分(右側)と、使用時に濡れた状態となる熱交換器部分(左側)は明確に分かれている。左側にはコードや電気機器の類は存在しない。右側の電装品箱やコードを濡らさないように気をつければそこまで恐れることはない。
そもそもアルミフィンは冷房使用時には常時結露して濡れた状態となる。冷やした缶ビールが汗をかくのと同じ原理だ。
そして、この結露は、フレーム内に設けられているドレン(排水)用の溝を流れてドレンホースから屋外へと排水される。
今回分解してみて、裏側のアルミフィンから出たドレーンも排水されるようきちんと溝が設けられていることがわかった。
エアコン洗浄スプレーも、基本的にはドレンとして屋外に排水される。汚れた泡がエアコンから垂れてきて壁を汚したら…と恐れる心配はなさそうだ。
ただし警告しておくと、長年の使用でドレンホースがゴミや水垢、または虫の死骸や枯れ葉などで詰まっている可能性もある。その場合は汚れた水が逆流して部屋の中にあふれる可能性もあるので念のため…。
やはりエアコンの分解清掃は怖い、という方は、やはりプロのエアコンクリーニング業者にお願いしてみるのも手だろう。