リーマンショックから10年。ダウ平均は過去最高値を更新し、あのショックは誰もの記憶から消え去ったように見える。だが、景気のサイクルは10年とも言われる。アメリカの長期金利が上がらず、債権運用者は決して景気の先行きを楽観視していないとも言われる。来たるべき次の危機に備える意味でも、21世紀に入ってからのS&P500指数とVIX指数(と関連ETF)の推移を見ていきたい。

2000年 ミレニアムとドットコムバブル崩壊

ドットコムバブルのさなか2000年3月10日に、IT関連銘柄の多いNASDAQ総合指数は5048を記録。S&P500指数も3月23日の1527.3がこの年の最高値。その後FRBの利上げによりドットコムバブルは崩壊。

 

2001年 21世紀の幕開けは米同時多発テロ

4月にもVIX指数が上昇しているが、これは海南島事件で米中の軍事衝突の可能性が高まったため。

だが、やはり何といっても忘れられないのは911のアメリカ同時多発テロ事件。9月11日〜16日までアメリカ市場が休場という措置が取られたが、もしマーケットがオープンしていた場合のVIX指数は計り知れないだろう。

VIX指数の最高値は9月21日に付けた49.3。年間を通して20-30の範囲であることを考えると、今より市場の不安は高かった。

12月2日にはエネルギー企業エンロンが巨額粉飾により破綻。ただこの日のVIX指数高値は26.4

S&P500指数も、この年の終値は1148.1。2001年の最高値から25%下げたことになる。

2002年 ワールドコム破綻

2002年8月5日、エンロンに続き通信企業のワールドコムが破綻。この日のVIX指数は45.1。S&P500もこの年の後半には1000を割り込む。

2003年 不況でイラク戦争始めるアメリカ

2003年3月20日にイラク戦争開始。戦争を始めると逆にVIX指数が下げていくのが何だかなあという感じ。ようやくVIX指数も20を切り、11月には16.2をマーク。

2004年

この年は景気の回復途上。VIX指数も10〜20前半。

11月には共和党のジョージ・W・ブッシュが大統領選挙で再選。

2005年

この年はVIX指数は10〜20の間。

2006年

VIX指数はさらに下がり12月には10.3。

S&P500も年後半から強い。

2007年 サブプライム問題が顕在化

S&P500は1500超え。

VIX指数は1月24日には9.89が最安値。だが、7月からサブプライムローン問題が顕在化。VIX指数は8月16日に37.50をマーク。後のチャイナショックもそうだが、8月のこの時期に「何か起こる」ことが多いように思う。

ちなみに日本でも、8月17日には日経平均が前日比-874円(-5.42%)と暴落。ドル円も明け方に2円近くも円高となる事件があった。

2008年 リーマンショックでVIX指数89.53!

2008年は言わずと知れたリーマンショックの年。サブプライム問題が顕在化したものの、夏までVIX指数は20〜30で推移していた。

こちらは9月〜12月を拡大したもの。

9月15日にリーマンブラザーズが破綻。この日のVIX指数最高値は31.87。
9月16日に米保険大手AIG国有化。
9月28日に金融安定化法案。この日のVIX指数は最高値48.40。

VIX指数の最高値は10月24日の89.53だが、この日は特に何かあったわけではないようですね…。
VIX指数の定義が「S&P500の今後30日間における予想変動率」であり、株価の急落に対して遅行性の指標であるということと関係していると思うんですが、だれか詳しい方は教えてください。

11月4日、この金融危機のさなか米大統領選挙で民主党のバラク・オバマが当選。この日のVIX指数は終値47.73。

また、11月にはアメリカが早くも量的緩和策としてQE1を開始。

12月31日のVIX指数は終値40.00。S&P500の終値は903.3。年初の1468から38%の下落。

2009年 底を打つと立ち直りの早いアメリカ経済

この3月が景気の谷といわれているようですね。年末にはS&P500は1100を回復。VIX指数も20まで下落。

これも、金融緩和の劇薬的な効果のなせるワザでしょうか。

また、2009年の1月30日には、ETFとしてVXX(iPath S&P 500 VIX ST Futures ETN)が上場。VIX指数の下落に伴ない順調に値を下げていきます。上場日終値が26772.5で、年末の終値が8721.9と、ほぼ1/3の価格まで下落しています(※調整後価格)。どこからショートしてもOKという感じです。

2010年 欧州ソブリン危機とフラッシュ・クラッシュ

2010年は欧州ソブリン危機が発生。

5月6日にダウ平均株価が数分間で9%(約1000ドル)下落するという「フラッシュ・クラッシュ」が発生。この日の最高値は40.71。翌日に42.15を記録。アメリカの運用会社が出した株価指数先物への大口売り注文をきっかけとした先物価格の急落に、コンピューターを使用した高速・高頻度取引(HFT)などのアルゴリズム取引が追随して下げ幅を大きくしたとされている。

5月21日にもVIX指数は48.20を付けている。

なお、VIX指数とVXXのグラフはこちら。リーマンショックも落ち着いたと見て空売りした場合、ポジションによってはソブリン危機でのVIX指数高騰に巻き込まれたケースもあるが、それでも10月にはプラ転している計算になる。

VXXは11月9日に1:4で株式併合。

2011年11月30日には、VIX先物短期のインバースETFである「VelocityShares Daily Inverse VIX ST ETN」(XIV)が上場している(緑のグラフ・左軸)。

2011年 米国国債格下げ

2011年といえば、日本では忘れられないのが東日本大震災だが、VIX指数は3月16日に31.28を付けている。

これに留まらず、8月にはアメリカの格付機関S&Pが、8月5日にアメリカの長期発行体格付を格下げ。8月8日には世界同時株安となった。ちなみに、ドル円が76円を付け超円高となったのもこの頃。

そして、VIX指数連動ETFの推移はこちら。インバースのXIV(左軸)は上場初日の終値9.557を大きく割り込む結果となっている。

2012年

2012年は、1月にフィッチがヨーロッパのイタリア、スペインなど5カ国の国際格下げなどあるも、あまり反応はなく、VIX指数は6月4日の27.73が最高。

VXXは順調に減価し、10月5日には再度1:4の株式併合。一方、インバースのXIVはようやく上場価格の2倍に到達。





2013年

S&P500指数はリーマンショック前の水準をついに上回り、年末には1848.4をマーク。

VIX指数は極めて低い水準で推移。

VXXは順調に減価し、XIVも順調。

2014年 S&P500は2000超え

この年も金融緩和による経済成長が続く。VIX指数の最高値は10月15日の31.06。この日はアメリカ長期金利が1年4ヶ月ぶりの低金利、1.87%となった。

この1年だけで見るとVXXもXIVもあまりパフォーマンスとしては芳しくない。

2015年 チャイナショック

8月に、中国の景気後退懸念による「チャイナショック」が発生。8月24日にVIX指数は53.29を記録した。

2016年 BREXIT とトランプショック

2016年は、6月にイギリス国民投票によるEU離脱(BREXIT)が決定。しかし1カ月後のマーケットは「あの騒ぎはなんだったの」という感じだったことを覚えています。

そして、記憶に新しいアメリカ大統領選挙のトランプ勝利。もしトランプが勝利した場合株価は下落しドルは売られ円高になるという前評判でしたが、トランプ優勢という形勢の中で急に相場の巻き戻しが起こりました。結局、減税等政策への期待感からトランプラリーと呼ばれる大相場になりました。

2017年 嵐の前の静けさか? VIX指数は1ケタ台

そして今年2017年ですが、政治日程で注目されたフランス大統領選挙も極右政党台頭の懸念の中、中道のマクロン候補が勝利。過去最高の株高、過去最低のVIX指数水準という状況になっています。

VXX、XIVともに安定の推移を見せています。VXXは年後半に10ドルを切った場合、再度の株式併合があるのではないでしょうか。